にじいろの窓

安房地域の支援が必要な子ども達への情報

子どもの偏食について

 息子は赤ん坊の頃、離乳食はなんでもペロリと平らげる子でした。

厳しかった母に育てられた私は、「子どもの好き嫌いはわがまま。親のしつけが悪いせいだ」と教え込まれてきたので、育てやすい子で良かった、と喜んでいました。

ところが。

1歳を過ぎ、息子の偏食が始まりました。

まず、白湯や麦茶などを飲まない。

スポーツドリンクかリンゴなどの果物のジュースしか飲まない。

そして2歳近くなると、それまでパクパク食べていたメニューをぴたっと食べなくなりました。

煮トマトは大好物だったのに。ほうれん草に鰹節をかけたおひたしも。

大好きだった白身魚の蒸し物も。みんなダメ。

食べるものはわずかで、からあげ、ハンバーグ、エビ(フライ、グラタンなど)、チャーハン、お茶漬け、卵かけごはん、麺類、マクドナルド(限定)のフライドポテト。

野菜はチャーハンやグラタンなどに混ざっている分しか食べない。

からあげの、衣の部分だけ食べて肉は残す。

魚は刺身以外全滅。果物ダメ。

子どものわがままを許さなかった母の厳しさを受け継ぐつもりだった私には、息子の偏食は本当にショックでした。

言い聞かせても、叱っても、頑として目の前の食事を食べず、泣き叫ぶ息子。

あれこれメニューを工夫しても、見た目がいつもと違ったり、知らない食べ物には口をつけません。 

さらに息子の問題は偏食だけではなくなっていきました。

3歳を過ぎ、自閉症との診断がおりました。

ある日、発達外来で主治医に偏食がひどくて参っていることを相談しました。

主治医はこう言い切ってくれました。

「卵かけごはんしか食べなくてもいい。野菜を食べなくても生きていける。この子が食べられるものを食べさせればいい。それよりも三食の習慣づけをする方が大切です。、朝ごはんから毎日お茶漬けでも、おせんべいでも大丈夫」

「ええー!」と反発しながらも、心からホッとしたのを覚えています。

それからは「お医者さんが言ってるんだから」と開き直ることができ、息子をしかりつけることも減りました。

今思えば、自閉症特有の感覚過敏が息子の偏食の原因だったのだと思います。

感覚が鋭く、咀嚼が苦手だった息子にとって、慣れない味付けや強い香り、噛み切りにくい食材などは耐え難いものだったのでしょう。

そんな偏食のせいでやせていた息子でしたが、障害児対応の幼稚園に進んで、食べられるものが増えました。

給食の時間には、子どもに先生が一対一でつき楽しく食事すること、マナーを教えてくれるのです。

最初は息子は好きなメニューしか食べませんでしたが、先生に「からあげをお代わりしたかったら、このサラダを一口食べてからね」と言われ、一口食べたら先生全員から拍手してほめられて。

この指導のおかげで、2年通った幼稚園を卒園する頃には、ほぼ何でも食べる子になっていました。

今や食べること大好き、グルメな中学生になった息子にたずねると、給食で嫌いなものを食べると「えらいね」とほめられるのが嬉しく、がんばって食べていたら色々な食べ物のおいしさに気づくことができたのだそうです。

一時期は作っても食べようとしない幼い息子にいらだち、「嫌がらせなの!」と叫んだ愚かな母親だった私。

そうじゃないんですよね、偏食にも子どもなりの理由があります。

ならば何が原因なのか、どうすれば食べてくれるのか、親も工夫してアピールすることが必要です。

偏食を気にしすぎると、食事自体が嫌いになったり興味をなくしたりする子もいます。

幼い子の偏食は気にせず、しかしあきらめず。

目の前の状況にとらわれ過ぎると、心配で焦ってしまいますが。

大丈夫。きっとおいしいごちそう大好きな子に育ちます。